給湯器点検商法とは?突然の玄関訪問にあわてないポイントと、契約後もできる対処法

「給湯器点検商法」をご存じでしょうか?
大手ガス会社や大手給湯メーカーの関係者による無料点検を装って虚偽の説明を行い、給湯器交換後に高額な請求をする悪徳商法で、70歳以上の高齢者をターゲットにしているケースが増えてきています。
この記事を読むと、悪徳商法の詳しい手口とその対策、契約してしまった後でもできる対処法がわかります。
目次
1.給湯器点検商法とは?

悪徳商法として注目されている「給湯器点検商法」について解説していきます。
(1)点検を口実に訪問し、高額な修理・交換契約を迫る
大手メーカーやガス会社を名乗って給湯器無料点検をもちかけ、点検後に早急に交換する必要があると契約を迫り、高額請求するのが給湯器点検商法の主な手法です。
独立行政法人「国民生活センター」の公表によると、給湯器点検商法に関する相談件数は、年度別だと2023年度は2022年度の同期と比較してなんと約3倍に増加しています。
(2)国民生活センターや自治体に寄せられた相談事例
国民生活センターに寄せられた相談の7割を70歳以上が占めており、高齢者は特に注意が必要です。
実際に寄せられている相談事例は以下のようなものになります。
- 「無料点検と言われて依頼したが、新しい給湯器への交換を勧められて契約してしまったので解約したい」
- 「今なら割引できると言われて契約したが、不審に思ったので解約したい」
- 「ガス会社だと思って点検を依頼し、給湯器の交換を契約したが高額だった」
- 「自治体から委託されたという業者の点検後に、温水器の交換が必要と言われた」
(3)「点検が無料」「今すぐ壊れる」など不安をあおる手口が特徴
給湯器点検商法の特徴は、「無料点検」「虚偽の説明」「早急な契約を求める」という点です。
大手給湯器メーカーや大手ガス会社の関係者を装ってアプローチしてくるため、信用して無料点検を受け入れてしまいがちです。
無料で点検してくれるのであればありがたいと安易に家に入れてしまうと、点検後に虚偽の説明をして不安をあおってきます。
「給湯器の耐用年数を過ぎていて危険だから、今すぐ交換した方がいい」などと専門用語を交えて説明されると、消費者はどうしても不安に感じてしまうでしょう。
特に、情報に乏しい高齢者は虚偽の説明をそのまま信用しがちです。
悪徳業者は、その場で交換の契約を迫ってきます。
冷静な判断ができない状況や、ほかの家族に相談できない状況で契約させようとしてくるのです。
「今すぐにでも壊れて大変なことになる」「今日中の契約であれば割引でお得に交換ができる」などと圧力をかけてきて、強引に契約させます。
契約後、無料点検だったはずなのに高額な出張費や点検費を請求してきたり、一般的な相場よりも高額で給湯器交換していたことがわかり、トラブルとなります。
2.被害に遭わないための注意ポイント

給湯器点検商法の被害に遭わないための対策について解説していきます。
(1)その場で契約しない
無料点検を許可し、給湯器の交換契約を迫られたとしても「その場で契約しない」ということを徹底しましょう。
仮に給湯器が寿命になっていたとしても、ほかの業者に見積もりをしてもらってから比較して依頼先を決めても遅くはありません。
詳細な見積もり提出してもらい、後日判断すると伝えることで、トラブルを回避できます。
「今日中の契約なら割引できる」というセールストークを信用する必要はありません。
実際に冷静になって比較してみると、割引した費用すら高額請求になっていることがわかるはずです。
(2)身分証・会社名・委託先を必ず確認する
契約しているガス会社や給湯器業者の関係者なのかどうかを、しっかり確認することも重要です。
突然訪問してくる悪徳業者の中には、ガス会社を名乗って無料点検に訪れるケースがあるので、身分証の提示を求めて確認しましょう。
会社名や委託先の確認に対して曖昧な態度であれば、すぐに断るようにするのがよいでしょう。
(3)「メーカー点検かどうか」を電話で直接確認する
大手メーカーの関係者を名乗る場合は、無料点検を許可する前に「メーカーに電話して直接確認する」ことで悪徳業者かどうかの判断がつきます。
疑うのは失礼だとは思わず、トラブルの回避のためにも十分に注意して対応をしてください。
(4)不審な場合は対面対応を避け、書面だけ受け取って検討する
直接会ってしまうと口車に乗せられてしまう危険性が高いので、突然の訪問に対しては玄関に出ての対応はせず、書面だけを郵便ポストに入れておいてもらうのがよいでしょう。
給湯器に限らず、訪問販売はすべてインターホン越しに断る習慣をつけておくと、悪徳商法によるトラブルを回避できます。
3.万が一契約してしまった場合の対処法

しっかり対策をして、給湯器点検商法に引っかからないようにすることが大切ですが、誤って契約してしまった場合などの対処法について解説していきます。
(1)クーリング・オフ制度での契約解除
「クーリング・オフ制度」は、訪問販売・電話勧誘販売の契約を解除できるという救済処置です。
ただし、適用されるかどうかは専門機関に依頼し確認する必要がありますので、必ずクーリング・オフできるというわけではありません。
また、期間に縛りがあり、契約書面を受け取った日を含めて「8日間」以内に業者にクーリング・オフを通知しなければなりません。
通知は電話ではなく、ハガキまたは電子メール(電磁的記録用)を使います。
通知する内容は業者へ送付する前に、書面をコピーしておきましょう。
クーリング・オフ制度が適用となれば、契約を解除できるほか、支払った費用も取り戻すことが可能です。
(2)消費生活センターへの相談窓口
専門機関に相談する際は、「消費者ホットライン」を利用するのがよいでしょう。
電話番号「188」に電話をすると最寄りの消費生活センターに繋がり、具体的なアドバイスをしてくれます。
クーリング・オフ制度が適用になるのかどうかの確認だけでなく、クーリング・オフ期間が過ぎてしまった場合の相談も受け付けています。
悪徳商法の手口に乗せられて契約してしまっても、時間をおいて冷静さを取り戻し不審に思ったらすぐに相談してください。
(3)支払い前・工事前ならキャンセル可能なケースが多い
給湯器交換工事前に給湯器点検商法だと気づいて契約を解除することは、難しい話ではありません。
工事に来ても断り、理由を説明すればキャンセルできる可能性が高いです。
事前に消費生活センターや弁護士に相談しておくと対処しやすいでしょう。
支払いをクレジットカードにしているのであれば、カード会社に連絡して支払いを止めてもらいます。
なお、クーリング・オフ制度を利用する場合は、カード会社への通知も必要です。
(4)すでに支払い済みの場合の返金交渉の流れ
クーリング・オフ期間であれば、支払い済みであっても返金交渉ができます。
返金交渉の際に「違約金がかかる」「損害賠償を請求する」と言って妨害をしてくる可能性がありますが、そのような妨害中はクーリング・オフ期間も延長されます。
クーリング・オフの通知を行い、その記録を保存し(5年間保管)、消費生活センターや弁護士の指示に従って対処してください。
4.給湯器点検・交換の正しい依頼方法

給湯器の耐用年数は約10年ですので、利用していればいずれ交換しなければいけません。
給湯器の点検・交換の正しい依頼方法について解説していきます。
(1)メーカーの公式点検サービスを利用
利用している給湯器メーカーの公式点検サービスであれば、適切な対応をしてくれます。
メーカーのWebサイトには点検サービスの連絡先が掲載されていますので、そちらを確認して依頼するのがよいでしょう。
(2)信頼できる地域の工務店・ガス会社に依頼する
給湯器の耐用年数を過ぎている場合は、実績があり信頼できる地域の工務店や給湯器専門業者を事前に探しておくと、いざというときに頼りになります。
給湯器点検商法の手口に引っかかることなく、点検や交換を安心して依頼できます。
また、ガス給湯器であれば、利用しているガス会社に自ら連絡をして点検を依頼する方法があります。
(3)定期的な点検・交換の目安を把握しておく
無料点検を許可してしまっても、給湯器の耐用年数を把握していれば虚偽の説明を受けたときに悪徳商法だと気づけます。
給湯器の寿命は使用頻度によって多少前後しますが、一般的には10年です。
この期間を過ぎて、給湯器の不具合が多くなってきたら交換のサインです。
信頼できる業者に点検してもらい、新しい給湯器に交換してもらいましょう。
そうすれば、悪質な業者のつけ入る隙はありません。
(4)補助金・助成金を活用して交換する選択肢も
高い省エネ効果がある高効率給湯器は、ランニングコストは抑えられても、従来型のガス給湯器や電気温水器よりも導入費用はかなり高くなります。
それを支援してくれる国の補助金制度「給湯省エネ2025事業」などを利用すると、お得に給湯器を交換できます。
「今なら値引できますよ」というセールストークに惑わされず、補助金制度を利用した購入方法があることも覚えておくとよいでしょう。
5.よくある質問

Q1. 給湯器点検商法とは何ですか?
給湯器の点検を口実に自宅を訪問し、高額な修理や交換を迫る悪質な訪問販売のことです。
無料点検を装い、「今すぐ交換しないと危険」などと不安をあおるのが典型的な手口です。
Q2. 給湯器点検商法の手口にはどんなものがありますか?
よくある手口は以下の通りです。
- 「メーカーの委託です」と名乗る
- 「点検は無料です」と言って敷地内に入ろうとする
- 点検後に「このままでは危険」「すぐに交換が必要」と高額な見積もりを提示
- その場で契約を急かす
Q3. 訪問業者が本物のメーカー委託業者かどうか確認できますか?
はい。メーカー公式の点検の場合は、事前に通知があり、突然の訪問は基本的にありません。
訪問業者が名乗った場合は、メーカーの公式窓口に問い合わせるのが確実です。
Q4. 万が一契約してしまった場合はどうすればいいですか?
訪問販売で契約した場合、8日以内ならクーリング・オフ制度で契約解除できます。
すぐに消費生活センター(188番)に相談し、指示を受けてください。
Q5. 「無料点検です」と言われたら対応しても大丈夫ですか?
基本的には注意が必要です。
正規のメーカー点検は事前通知があります。
突然の「無料点検」は悪質商法の可能性があるため、安易に家に入れないようにしましょう。
Q6. 正しい給湯器点検や交換はどこに依頼すればいいですか?
信頼できるのは以下のルートです。
- 給湯器メーカーの公式点検・修理窓口
- ガス会社・電力会社などインフラ事業者
- 地域で実績のある工務店や交換専門業者
6.まとめ

高齢者を狙った給湯器点検商法は、今後さらに増えていく可能性があります。
何かあれば、家族や消費生活センターにすぐ相談することで、被害を防ぐこともできます。
実家の両親と離れて住んでいる方は、家族を守るためにも情報を共有し、悪質な商法の被害に遭わないよう対策をしていくことが重要です。
無料点検と言って訪問してくる業者には、十分注意してください。
















